広告品評

広告を勝手に品評します。

【𠮷川質店】コピーが持つリズム感

良いコピーの条件とは何でしょうか。
コピーライティングについて学べる「宣伝会議」のある講座では

「何を言うか」と「どう言うか」が大事。

と教わりました。
概ね、正解だと感じます。

 

そして、ほかにも良いコピーの要素はたくさん挙げられるでしょう。

  • 短い
  • インパク
  • ユーモア
  • 想像力
  • ジャンプ力
  • リアリティ
  • 直感的

などなど。

今回はその中の一つである、リズム感についてご紹介します。

 

日本人というか、日本語には
読みやすくて心地よい独特のリズムがあるのです。

 

代表的なのが、俳句(川柳)の5・7・5。
短歌の7・7を入れても良いでしょう。
ネーミングに関しては、4文字が好まれるということもありますね。

 

上記の文字数に限らず、CMや動画などでコピーが「読まれる」場合は
きちんとこのリズムを大切に考えます。
要するに、コピーの内容とはまったく別の軸で
聞いた時の響きや余韻が心地よいかどうかに注意を働かせるのです。

 

人は文字を認識した後で無意識に発音し、
「読む」というアクションをしている人が多くいます。

つまり、ポスターや看板などのグラフィックにおいても
コピーはやはりリズム感が重要。

 

 

すみません、前置きが長くなりました。
ではこちらをご覧ください。

f:id:koukokuhinpyou:20171018005926j:plain

 

知り合いに
頭を下げて借りるより
いつでも気軽に
𠮷川質店

 

これはですね、こう言っちゃあアレですけど
ボーッとしてたら目に入らないタイプの広告なんですよ。
まず、ブルーを基調とした落ち着いた配色なので
目に飛び込んでこない。
目立つアイコンやグラフィック、つまりビジュアル的なおもしろさがないので
印象に残らない。
そして、文字が多いので、地味。
さらに、文字の中でもキャッチフレーズっぽい
ポジティブでキラキラとした、いわゆるキラーワード(殺し文句)がなく、
事務的でおもしろくない。

 

そんなマイナスポイントばかりで
いかにもお堅い、伝統的な質屋さんだなと思ってしまうのも致し方ありません。

 

しかし、ふと文字を読んでみてると
「知り合いに
頭を下げて借りるより
いつでも気軽に……」

が認識されます。

そしてこれは、5・7・5・7(厳密には8)という
短歌のようなリズム。
それに気付いた時にはもう遅く、
無意識に「あと7文字欲しい!」という枯渇感が生まれます。

 

そこで、広告全体をひと通り眺めて
「𠮷川質店(7文字)」という
心地よいフィニッシュを迎えられる、
そんなメカニズムになっているのです。

つまり、全体的に地味であえて目立たないデザインはカモフラージュ。
その上でコピーの不完全性、認知的不協和的(要は無意識のモヤモヤを解消したい思い)を仕掛けて、広告としてのインプレッション、強い印象を与えようとしているのではないか、という仮説ができました。

 

これを意図的に設計しているのだとしたら
なかなかのテクニシャン……!

 

ただ一つ、残念に思うのは
サイトを見ると「吉川質店」になっているんですね。

www.yoshikawa-shoji.jp

 

「𠮷川」と「吉川」程度の表記ゆれに注意するのは
ライティングの基本です。

 

それを考えると、コピーライターとしては大減点なので
ただの偶然かなと思ってしまいます。
(まあ、サイト制と看板の制作者が同じとは限らないという実情もありますし)

 

……ですが、広告制作物のそのような背景を考えてニヤニヤできるのも
一つの楽しみと言えるのではないでしょうか。